INTERVIEW
ぺネロープ役 
満島ひかり インタビュー
―― 「サンダーバード」という作品はいつからご存知でしたか?
満島 なかなか放送を見る機会はありませんでしたが、作品の存在は以前から知っていました。4年ほど前に『トットてれび』というドラマで黒柳徹子さんの役を演じさせていただいた時に、NHKさんからいろんな映像資料をもらって。その中に「サンダーバード」も入っていたので、何話か見ることができていた感じです。

―― 黒柳さんが演じるペネロープに触れた印象はいかがでしたか?
満島 あのちょっと浮き世離れした感じとか、チャーミングさ、美味しいものと楽しいこと、おしゃれなものが大好きな感じは徹子さんにピッタリでしたね。

―― 資料映像として観た「サンダーバード」はいかがでしたか?
満島 もちろん、その後に自分が演じることになるとは思いもよらないのですが、単純に面白かったです。作品に夢中にさせる脚本が面白いし、人形による演技も全然ストレスが無くて。何か、とてもいいものを見せてもらった感じがしました。背景とか乗りものの配置なんかも、グッとくる距離やアングルで撮影されていて、映像全体がとてもシュールで、格好の付け方が大胆でこだわりだらけですごいなって。時代のたおやかさを感じるんですよね。細かな皮肉もきいていて、大人な笑いの時間を過ごすことが贅沢に思えました。

―― 確かに、ペネロープとパーカーの関係は大人な笑いを醸し出す雰囲気を感じますね。
満島 ふたりの関係性は面白いですよね。やりとりもウィットに富んでいて。ちょっとしたブラックユーモアや飴と鞭がある感じなんかは、イギリスの作品らしい雰囲気があって楽しいし、すごくいいです。

―― 演じられたペネロープのキャラクターに関してはどのような印象を持たれましたか?
満島 大変に女性らしい感じですよね。男性をしっかりと立てて、頼もしく使う場合もあれば、ちょっと軽くあしらうところもあって。そのあたりの微妙なやり取りは、他では見たことがなくて、魅力的でした。今回演じさせていただいたエピソードは、そういったペネロープの性格がよく出ていますよね。突っ込める部分も含めて、見ているとマニア心がくすぐられて、深みにハマる感じがあります。

―― そういう意味では、作品は予想以上に楽しめたということですね。
満島 私自身、マニアックなものが大好きな人間なので、予想をはるかに超えて楽しめました。吹き替えを担当しませんかとお話をいただいた時は、「凄いオファーが来ちゃった!」と、思わず笑ってしまいましたが(笑)。サンダーバードは、アニメのアフレコよりも、映画の吹き替えに近いというお話をうかがって、さらに興味が湧きました。ただ、私は声だけで演じる世界ではまだ新人なので、上手くやれるだろうかと不安はあったんです。とは言っても、声だけのお芝居には以前からとても興味を持っていて。この絶好の機会に踏み込んでみようかなと。あとやはり、作品の魅力が強くて、「何はともあれ乗らなくちゃ!」と。

―― 収録にあたって、演出の方からは何かオーダーがありましたか?
満島 収録の最初は、徹子さんの元の感じに寄せて演じてみたのですが、「かつての作品への気持ちはちゃんと感じるから、もっとあなたらしくていいですよ」と背中を押してもらいました。徹子さんとは、まるで運命のように何度も縁がありまして。連続テレビ小説『おひさま』で、私が演じていた役の晩年を徹子さんが演じてくださったこと、『トットてれび』で私が徹子さんの役を演じたこと。そして今回、かつて徹子さんが演じていたペネロープの声を演じませんか、とのお話がやって来たわけで。この縁は私にとって、とても嬉しい宝物です。だからこそ、ペネロープの声の担当をすることが想像以上にプレッシャーでもありました。パーカー役の井上和彦さんが練習に付き合って下さり、それもパワーになっていました。

―― 演じるに関しては、苦労されたのでしょうか?
満島 テレビシリーズのペネロープは、あの時代ならではの妙な甘さがあって、そこがたまらなくいいんですよね。私の声だともっとボーイッシュでさばけた印象になりそうだったので、そこは気を付けました。その甘さとか抜けた感じをできるだけキープしながら、上品でいてクールなところ、そんなつもりはなくパーカーをお上手に使っている感じなんかを出したくて。苦労というより、ペネ ロープの持っている素敵さと同じレベルに声を持って行くのに、何度か試行錯誤をしていた感じでしょうか。

―― 最後に「サンダーバード」ファンに向けてひと言お願いします。
満島 ずっとファンでいる方、子供の頃に触れたサンダーバードとの記憶がある方に比べると、まだまだ思いは浅いかもしれませんが、私自身もとても楽しんでペネロープを演じさせていただきました。多分、今の若い方や子供たちにとっても、この作品には驚くような魔法の世界があると思うし、声を担当された俳優のみなさんもとっても素敵で、もう声を聞いているだけでも飽きない、面白い日本語吹き替え版になっています。結構マニアックに楽しめる部分がたくさんある作品ですので、面白がって見ていただけましたら、嬉しいです。