サンダーバード55/GOGO

INTRODUCTION
1965年にイギリスで、翌1966年には日本でも放送が開始され、英国テレビ界の名匠ジェリー・アンダーソンの代表作にして、スーパーマリオネーションと呼ばれる独自の撮影手法を駆使した特撮人形劇の最高傑作として名高いテレビシリーズ「サンダーバード」。なかでも日本での人気は絶大で、「ウルトラセブン」をはじめとした黎明期から、今日では『シン・ウルトラマン』監督の樋口真嗣や『シン・仮面ライダー』監督の庵野秀明がファンであることを公言するなど、数々の日本特撮、ロボット・SFアニメ作品にも多大なる影響を与え、世界でも、『2001年宇宙の旅』『スター・ウォーズ』『007』など錚々たる作品に影響を与えた伝説的作品として知られている。その伝説が、当時の技術を再現した奇跡の完全新作として帰ってくる!
ファン長年の夢が遂に現実に!
幻のエピソードがクラウドファンディングで奇跡の映像化!
本国イギリスの熱狂的なサンダーバードファンのクラウドファンディングによって制作された3話のエピソードを日本公開用に独自に一本化した日本語劇場版である本作。3話のエピソードはオリジナルシリーズ放送当時音声ドラマとして書かれた脚本をもとに、はじめて映像化されたもの。オリジナルへのオマージュとしてスーパーマリオネーションの伝統的な技術を駆使して撮影され、完全新作として蘇る!
『シン・ウルトラマン』監督の
樋口真嗣が日本版構成を担当!
オリジナルの撮影手法を完全再現した新作3話を、日本の特撮を牽引する樋口真嗣が日本公開用に構成。大のサンダーバードファンである樋口真嗣が、イントロダクション・各話間・カーテンコールを新たに制作。オリジナルエピソードはそのままに世界初の1本の映画が誕生する!
満島ひかり 国際救助隊員ペネロープの声を担当!
豪華日本語キャスト陣が
サンダーバードに集結!
今作の中心人物の国際救助隊員、ペネロープは、モデルもこなす貴族の娘で元スパイ。その日本語キャストに満島ひかりが決定!初代ペネロープの声は黒柳徹子が務めていたが、「トットてれび」で黒柳役を演じた満島ひかりが黒柳徹子からバトンタッチ!ほか井上和彦、大塚芳忠、森川智之、日野聡、櫻井孝宏、江口拓也、堀内賢雄、立木文彦ら大ベテランから大人気声優まで豪華日本語キャスト陣が集結!1965年の劇場版でスコット・トレーシーを演じた大塚芳忠が、半世紀の時を経てパパ、ジェフ・トレーシーを演じるのもファン感涙もの!
STORY
エピソード1「サンダーバード登場」
国際救助隊が本格始動する少し前、ジェフ・トレーシーに招待されたレディ・ペネロープは、執事のパーカーと共に、太平洋上の秘密の場所にある美しい島〈トレーシー・アイランド〉に到着、島に隠された驚くべき技術とサンダーバード1号から5号を目にする。エージェントとして大きな秘密を共有したペネロープが加わることで、国際救助隊はついに本格稼働をスタートさせる。
エピソード2「雪男の恐怖」
ウラン工場が爆破され炎上する事件が発生。同じ頃、国際救助隊はエベレストで雪男に襲撃され救助を請う通信をキャッチして、ペネロープに調査を依頼。ペネロープはスキーコプターに乗り込んでパーカーと共に現場に向かうが、この事件には国際救助隊の宿敵のフッドによって罠が仕組まれていた。フッドの手に落ちるパーカー、ひとり雪深い場所に取り残されるペネロープは危機を脱することができるのだろうか?
エピソード3「大豪邸、襲撃」
イギリスの大邸宅に忍び込み、貴重品を奪っては屋敷を爆破する連続強盗事件が発生。次に自分の屋敷がターゲットとなることを予見したペネロープは、わざと屋敷を留守にして、犯人たちを呼び寄せる作戦を決行するが、犯人たちに見つかり気を失ってしまう。仕掛けられた爆発の時間が迫る中、国際救助隊はペネロープを救い出すことができるのだろうか?
CHARACTER
レディ・ペネロープ(CAST:満島ひかり)
2039年12月24日生まれ。国際救助隊の活動を支えるロンドン支部エージェント。冷静沈着で何も恐れない度胸を持つ。由緒正しいイギリス貴族のクレイトン・ワード家の令嬢であり、その美貌を活かしてファッション誌の表紙やショーのモデルもこなす。そうした表向きの行動をする一方で、かつては、ヨーロッパの諜報組織〈FEDERAL AGENT BUREAU〉のスパイも務めていた。スパイ・エージェントとして活動する中で、国際救助隊の司令官であるジェフ・トレーシーと出会い、彼の救助活動への考えに理解を示して専属のシークレット・エージェントとなる。貴族としての気品に溢れ、スパイ活動で培った経験と明晰な頭脳で、国際救助隊のための情報収集や調査活動などを行っている。好きなもの:ココア、嫌いなもの:ネズミ
パーカー(CAST:井上和彦)
ペネロープの執事であり、彼女の愛車であるFAB1の専属運転手。かつては世界一の金庫破りとして活動していたが、エージェント活動していたペネロープに捕まり、彼女の説得によって改心し、執事となった。ペネロープに対しての忠義にあふれており、執事の仕事に高い誇りを持つ。一方で、金庫破りの腕は現役であり、どんなに強固な金庫も手にしている道具を駆使して簡単に空けてしまうほどのテクニックを持っている。裏社会で活動していたことから、その筋の情報にも通じており、射撃の腕も高く、ペネロープのエージェント活動をサポートする能力にも長けている。
ジェフ・トレーシー(CAST:大塚芳忠)
国際救助隊の創設者で総司令官。アメリカ空軍に入隊し、宇宙局事業団に参加して月面ステーションの建設に携わった。妻のルシルを事故で亡くしたのをきっかけに宇宙局を辞め、事業家へと転身。天才的頭脳で成功し大富豪となり、妻の死に報いるべく災害で危機的な状況に陥る人々を救うために国際救助隊を設立する。軍隊経験などで得た、これまでの知識と経験を活かし、国際救助隊では司令官の役目を務め、自分の5人の息子をはじめ、国際救助隊メンバーに的確な指示を行う。メンバーからの意見などにもしっかりと耳を傾け、適切な救助活動を行い、人命の救出を最優先することを信条としている。
スコット・トレーシー(CAST:森川智之)
サンダーバード1号操縦士。長男で、国際救助隊メンバーのリーダー。父のジョンが不在の際は変わって指揮を執ることもある副司令官的な存在。エール大学、オックスフォード大学を卒業後にアメリカ空軍に入隊。その後、除隊して国際救助隊として活動している。超音速で移動できるサンダーバード1号でいち早く災害現場に駆けつけ、情報収集を行い、災害の状況を冷静に分析して、救助活動に必要な装備の指示や現場での指揮を行う、救出活動における司令塔的な存在。
バージル・トレーシー(CAST:日野聡)
サンダーバード2号と救助メカの操縦を担当。三男。機械や機器の扱いに長けている。高等科学技術学校デンバーを卒業しており、力強く堂々とした見た目とは裏腹に、絵画やピアノ演奏などのアーティスティックな技術も持っている。サンダーバード2号で現場に向かい、運んできた救助メカに乗り込み、危険な災害現場の最前線に身を投じることが多く、大胆な行動力と繊細な作業を両立することができるバージルだからこそ、難易度の高い救助活動が行えていると言える。
アラン・トレーシー(声の出演なし)
サンダーバード3号の操縦士。兄弟の末っ子の五男。カーレースのチャンピオンドライバーであり、大のロック好き。宇宙飛行士に憧れ、国際救助隊ではサンダーバード3号の操縦を担当し、ジョンの交代要員としてサンダーバード5号への滞在や宇宙での救助活動で活躍。兄たちのアシスタントとして、地球での救助活動にも出動する。ペネロープに秘かな恋心を抱いている。
ゴードン・トレーシー(CAST:江口拓也)
サンダーバード4号操縦士。四男。水泳競技のバタフライでオリンピックに出場し、金メダルを獲得した経験を持つ。世界海洋探査保安警備隊、世界海底安全パトロールに所属していたが、自身が海難事故に遭い重傷を負ったことをきっかけに国際救助隊に参加することを決意した。水泳技術などを駆使して海難事故における救出活動を担う。状況によって、バージルに代わってサンダーバード2号の操縦を担当することもある。
ジョン・トレーシー(CAST:櫻井孝宏)
サンダーバード5号メインオペレーター。次男。通信技術のエキスパートであり、宇宙のサンダーバード5号に滞在して、世界各地から発信される救難信号をキャッチし、本部のあるトレーシー・アイランドに伝える役目を担っている。ハーバード大学で専攻していた天文学と電子工学を活かして、卒業後には宇宙飛行士となった。救助要請の情報収集後には、先に現場に到着したサンダーバード1号から送られる災害現場での状況などの通信を中継し、司令官であるジェフから指示を伝えることで、より的確な救助活動のサポートを行っている。
ブレインズ(CAST:堀内賢雄)
国際救助隊のサンダーバード1号〜5号と救助メカを開発した天才科学者にしてエンジニア。国際救助隊の頭脳とも呼べる存在。本名はホラチオ・ハッケンバッカー。少年時代に災害で両親を亡くしたが、その才能を目にしたケンブリッジ大学の教授に育てられ、ジェフによる経済的な支援もあり、英才教育を受けた。救助メカの開発やメンテナンスに加えて、その明晰な頭脳を活かして困難な救助活動においては科学的に有用なアドバイスなどを送り、時には自らも災害現場に向かうこともある。
フッド(CAST:立木文彦)
サンダーバードの秘密をつけ狙う「死の商人」。黒魔術や超能力を使い、正義と倫理など気にもかけない世界一の大悪党。犯罪組織や軍事スパイなどと通じており、彼らのバックアップによって、最先端科学技術施設などに侵入し、その情報や技術を盗み出すという諜報活動を目的としている。秘密裏に活動している国際救助隊のテクノロジーに目をつけ、それを盗み出すべく暗躍。人の心を操る怪しげな呪術を使うことができ、また変装の名人でもあり、それらの能力を駆使した侵入工作や情報収集、テロ活動などを行うが、国際救助隊によって阻止されることも多い。
STAFF
プロデューサー・監督:
スティーブン・ラリビエー
(「雪男の恐怖」監督)
1984年英国ロンドン生まれ。60年代英国ドラマ研究家、ドキュメンタリー監督として活躍。著書には「Filmed in Supermarionation : A History of the Future」(2010年)、「21世紀サンダーバード読本」(2012年)がある。2014年にドキュメンタリー『Filmed In Supermarionation』を制作。その実績を買われ、2015年に『サンダーバード1965』を2015年に手掛けることになる。2010年から2年間、日本に滞在し、講道館で柔道を習っていたこともある親日家。
監督:ジャスティン・T・リー
(「サンダーバード登場」)
1987年生まれ。イギリスのTV用作品で、監督、特殊効果などで活躍。スティーブン・ラリビエーと共にドキュメンタリー「Filmed In Supermarionation」(2014)の制作に関わる。『サンダーバード55/GOGO』では、「サンダーバード登場」で監督を務める他、特殊効果ディレクター、編集、人形操作監修も担当している。
監督:デヴィッド・エリオット
(「大豪邸、襲撃」)
1931年生まれ。イギリスのTVディレクター。1964年から制作が始まった「サンダーバード」に携わり、全32話の中で、9話分の監督を務めた。長らく現場から離れていたが、親交のあったスティーブン・ラリビエーから本作の企画を聞いて監督復帰を志願。「大豪邸爆破」のエピソードで監督を務めている。
脚本:アラン・フェネル
(「サンダーバード登場」「大豪邸、襲撃」)
1936年生まれ。イギリスの脚本家。「サンダーバード」を制作したAPフィルム作品で、「宇宙船XL-5」、「海底大戦争 スティングレイ」、「謎の円盤UFO」などの作品に脚本家として参加。「サンダーバード」でも10エピソードの脚本を手掛けている。『サンダーバード55/GOGO』に使用されたサウンドドラマでは、「サンダーバードの登場」と「大豪邸爆破」はアラン・フェネルが担当。2001年没。
脚本:デヴィッド・グラハム
(「雪男の恐怖」)
1925年生まれ。イギリスの俳優。「サンダーバード」を制作したAPフィルム作品では「スーパーカー」、「宇宙船XL-5」、「海底大戦争 スティングレイ」などに参加。他に「ドクター・フー」にも出演している。「サンダーバード」では、ゴードン・トレーシー、パーカー、ブレインズなどの声を担当している。
脚本:デスモンド・サンダース
(「雪男の恐怖」)
1926年生まれ。イギリスのTVディレクター、脚本家。「サンダーバード」を制作したAPフィルム作品では、「キャプテン・スカーレット」、「謎の円盤UFO」などに各話監督や脚本家として参加。『サンダーバード』では最も多い11エピソードを監督。『サンダーバード55/GOGO』では、「雪男の恐怖」の脚本を担当している。2018年没。
日本語劇場版構成:樋口真嗣
1965年9月22日生まれ。東京都新宿区出身。『ゴジラ』(84)に造形助手として参加し、映画界に加わる。最初の仕事は着ぐるみの補助役だった。その後、親交のあった庵野秀明らが設立した株式会社ガイナックスに参加し、長編アニメーション作品『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(87)で助監督を担当。以後、GONZO、Motor/liezといった映像製作会社を経て、多くの特撮作品に携わる。現在では映画監督、特技監督、装幀家など多方面で活動中。代表作として特撮監督を務めた『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)、監督作では『ローレライ』(05)、『日本沈没』(06)、『進撃の巨人ATTACK ON TITAN』(15)、『シン・ゴジラ』(16)では最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞。2022年5月に『シン・ウルトラマン』が公開予定。
PRODUCTION NOTES
新規映像制作の始動
日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』のベースとなった3本のエピソードは、2015年に「サンダーバード50周年記念エピソード」として、「サンダーバード」を放送していたイギリスのテレビ局ITVのもと、プロデューサーと監督を務めたスティーブン・ラリビエーによって企画・製作された。
ITVは、「サンダーバード」の50周年を記念するのに相応しい企画を模索。その中で、ジェリー・アンダーソン率いるAPフィルムが製作していた「サンダーバード」、「海底大戦争スティングレイ」、「キャプテン・スカーレット」などで用いられた「スーパーマリオネーション」という撮影技法に焦点を当てたドキュメンタリー映画『Filmed in Supermarionation』(2014年、日本未公開)を製作した、映像研究家のラリビエーにコンタクトを取った。
ラリビエーは、「サンダーバード50周年記念」に相応しい企画について尋ねられると、放送当時に発売されていた「サンダーバード」の音声ドラマレコードの音源を使った新作映像を、当時と同じスーパーマリオネーションの手法を再現する形で制作してはどうかと提案する。この音声ドラマは、「FAB - THE ABOMINABLE SNOWMAN」、「INTRODUCING
THUNDERBIRDS」、「LADY PENELOPE
INVESTIGATES... THE STATELY HOME ROBBERIES」とタイトルが付けられて、1965年に発売された7インチレコード。TVシリーズで「サンダーバード」で声の演技を担当していたペネロープ役のシルビア・アンダーソンをはじめとしたテレビシリーズと同じ役者が声をあてていた、21分の短編音声ドラマだ。これまで映像化されていない、音源のみが存在する幻のエピソードを当時の技術で映像化する。ラリビエーの企画は受け入れられ、当時と同じ技法をつかった50年ぶりの新作の制作が動き出した。
ファンの力を借りた
クラウドファウンディングを開始
ラリビエーは『Filmed in Supermarionation』の際に、ペネロープやパーカーが登場する短編映像を制作しており、スーパーマリオネーションを復活させることができる手応えはすでにあった。しかし、ITVからの50周年記念番組についての企画が求められたのは2015年5月。「サンダーバード」50周年記念日の目玉として発表されるのは9月30日。スポンサーをつのり制作予算を集めるにしても時間が足りない。そこでラリビエーは、「サンダーバード」ファンの力を借りることを思い付く。その方法とはクラウドファンディングだ。
クラウドファンディングによって制作予算を捻出することには、いくつものメリットがあった。通常、映像作品を作る際には企業などにスポンサードを依頼して予算を集めるが、その際に製作委員会を作った場合、関わった企業から映像の内容に関してさまざまな要望が出てしまう。60年代の映像を再現することにこだわった場合、そうした要望を入れるのは難しく、さらに企業を動かすにはどうしても時間がかかってしまう。一方、クラウドファンディングであれば、ラリビエーの意図を理解したファンが協力してくれるということでスポンサーの意見が振り回せることなく映像を作ることができる。そして、何より「サンダーバード」のファンも、資金提供という形で50周年記念作品に参加したという思いを持つことができるというメリットもあった。「サンダーバード」ファンによる、ファンのための映像。これこそまさに50周年を記念するに相応しいと言えるだろう。「サンダーバード50周年記念エピソード」は、ファンというコミュニティに手助けしてもらえたという形で進められ、クラウドファンディングは1ヶ月行われ、イギリス国内外から3378人が支援。218000ポンド(約3400万円)が集まり、ITVからの制作予算と合わせて、ラリビエーの思い描いた通りの50周年記念番組が作られることになった。
当時の映像だけでなく、
撮影技法までも再現
「サンダーバード50周年記念エピソード」を制作するにあたって、撮影はイギリスのスラウにある、かつて「サンダーバード」のオリジナル版の制作でも使われた建物を使用して行われた。
撮影に使用するパペットや救助メカのミニチュア、セットなどに関しては、さまざまな資料をあたって全て新たに制作がなされた。パペットに関しては、当時と同じく人毛を使用し、奥行き感のある義眼を用いるなど、当時のものを忠実に再現。救助メカに関しても、当時の設計図などは残っていないため、当時存在していた特定のモデルを映像や写真資料を駆使することで、複数のサイズを制作。パペットもメカのミニチュアもファン目線としても納得ができるものを求めて作り込まれており、当時とほぼ同じようにしかみえない完成度となっている。また、オリジナル版でもバンクシーンとして流用されていたサンダーバード1号や2号の出撃シーンは、再撮影することなく当時のフィルムを使用するなど、そこもオリジナル版をならう形で再現されている。
ファンならば自宅と同じように見慣れているトレーシー島のラウンジも忠実に再現。劇中で使われている細かいパーツなどもなるべく同じになるよう、オークションサイトなどを駆使して集められた。また、ジェフ・トレーシーの机の横に貼られた写楽の絵に関しては、オリジナル版の美術担当者が参考にした書籍をもとに、「イギリス人が模写した日本の絵」を再現するなど、細部までこだわっている。
一方で、爆破させるミニチュアなどや、新規のセットなどは現在の技術を駆使すれば、より精密でクオリティの高いものを作り上げることができるが、あえて当時と同じような素材を使い、ラリビエー曰く「うまく作り過ぎないように注意する必要がある」ということを念頭に置いて制作。小道具やセットのデザインも当時のものを再現し、当時のやり方と同じように照明を当てるというこだわりが反映されていった。
往年のスタッフも集結した
記念すべき撮影工程
スーパーマリオネーションの要であるパペットの操演に関しては、1960年代後半で終わりを迎えており、技術は継承されずにいた。一方で、ラリビエーは独自の技術を持つパペティアン(操演師)と共に『Filmed in Supermarionation』を制作していたこともあり、彼らが参加することでスーパーマリオネーションの再現を可能とした。ラリビエーのチームのパペティアンたちは、仲間うちでトレーニングし、自ら技術を身につけていった。また、「サンダーバード」をはじめとしたスーパーマリオネーション作品に参加していたオリジナルスタッフのひとりであるメアリー・ターナーも撮影に参加することで、操演技術のアドバイスなども行っている。
また、3本のエピソードのうちの1本は、1966年当時「サンダーバード」の本編の監督を務めていたデビッド・エリオットが参加。撮影当時84歳だったエリオットは、「サンダーバード50周年記念番組エピソード」の企画を聞き、自ら監督を志願したという。また、オリジナル版で特殊効果を担当し、その後『エイリアン』や『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』などに参加していたブライアン・ジョンソンも撮影現場を訪れ、ラリビエーにアドバイスを行うなど、貴重な人材からの協力があって映像が作られていった。
メアリー・ターナーの人形の操り方、デビッド・エリオットの演出の仕方など独特のやりかたを直接目にしたラリビエーは「オリジナルの「サンダーバード」シリーズを思い出して、あのシーンはこうやって撮っていたんだなとわかるようになりました。彼らの働く様子を見ることができたのは、タイム・トラベルをしたように印象的だった」と語っている。
また、音声に関しては、レコードに収録されている要素では映像化するには不足する部分があった。そこで、自然な流れで流用できる台詞は、かつてのテレビシリーズの本編部分から音声のみを抜き出して追加。音声のみのエピソードを、より映像ドラマとして高く完成させるためのアレンジも加えられている。
撮影は2015年9月初頭からスタートし、撮影に関わる人数も最大で20人、少ない日は5人というようなごく小規模な形で進められ、約3ヶ月半をかけて12月半ばに撮影が終了。多くのファンが「当時撮影され、まだ見たことがない幻のエピソードがあったのか?」と驚くほどの再現性を持つクオリティで完成するに至った。