サンダーバード55/GOGO

サンダーバードとは
「サンダーバード」は、イギリスの映像プロデューサーであるジェリー・アンダーソンが率いる映像製作会社APフィルムズによって制作された特撮TVドラマ。
ジェリー・アンダーソンは、電磁式部品などを取り入れることで、より人間的な表情や動きを再現することができるマリオネットを駆使し、実写や特撮と組み合わせることでリアル感のある映像を作り上げる〈スーパーマリオネーション〉を駆使した作品を世に送り出していた。〈スーパーマリオネーション〉作品は、「スーパーカー」(1961年)、「宇宙船XL-5」(1962年)、「海底大戦争スティングレイ」(1964年)が制作されており、「サンダーバード」は、それらに続く第4作目として、1965年から放送が開始された。
「サンダーバード」誕生のきっかけとなったのは、1963年にドイツで発生した「レンゲデ鉱山事故」だった。イギリスで事故のニュースを聞き、救出の状況を固唾を飲んで聞いたジェリー・アンダーソンは、「高度な技術を持つ救助隊が存在すれば……」と考える。そして、そのアイデアをもとに「国際救助隊」という形で企画が立てられ、後に「サンダーバード」として映像化されることになる。
サンダーバードの舞台となるのは、2065年の近未来。この世界では戦争は起こっていないが、原子力や電子機器などの進化によって大きく発展した科学技術は、生活を便利にする一方で、ひとたび事故が発生すると大きな被害が及ぶという危うさもあった。そんな中で、元宇宙飛行士であり、その後大きな資本を得たジェフ・トレーシーは、地球上の各地で発生する災害や事故から人命を救う「国際救助隊」を設立する。
国際救助隊は、高い技術と科学力で作られたサンダーバード1号から5号までのスーパー救助メカと、特殊救助車両を駆使して、通常では危険で困難な救助作業に挑む。そのメンバーは、ジェフ・トレーシーの子供である5人の息子たちと、彼らをサポートする仲間たちであり、活動や組織の詳細に関しては一般には公表しない形で運営されている。その一方で、国際救助隊の持つ科学技術を悪用しようとする死の商人、フッドに狙われており機密の漏洩にも注意がなされていた。
「サンダーバード」は、災害救助に命をかける国際救助隊の面々の活躍を描きつつ、原子力技術や自然破壊などへの警鐘を描く人気作となり、全32話のテレビシリーズと2本の劇場映画『劇場版・サンダーバード』と『サンダーバード6号』が制作された。
日本では、1966年4月からNHKにて放送をスタート。同時期に「ウルトラマン」を制作していた、日本特撮界の先駆者である円谷英二は大きな衝撃を受け、1967年に放送を開始する「ウルトラセブン」のメカニック描写にも影響を与えたと言われている。
2004年にはCGを駆使したハリウッド制作の実写映画版『サンダーバード』、2015年には50周年を記念したリブート版フル3Dアニメ「サンダーバード ARE GO」が制作されている。
日本における「サンダーバード」
「サンダーバード」の日本での放送は、1966年(昭和41年)4月10日にNHK総合にてスタートした。これは、イギリス本国での放送から1年後にあたる。当時の日本では、円谷プロダクションが制作する特撮テレビ番組「ウルトラQ」が放送中であり、その後番組の国産初のカラーで制作された特撮テレビ番組「ウルトラマン」の放送開始の3ヶ月前という、まさに特撮番組のブームが起こっているタイミングだった。
当時は、カラーテレビの普及の最中であり、この初放送時はモノクロで観たという古参のファンも多くいるだろう。当時の子供向け番組は、現在もアニメーションなどのフォーマットで続いている30分だったが、NHKは「サンダーバード」を子供番組としては異例の1時間枠で放送。国営放送ということもあって途中にCMが入らず、1時間没頭して作品を楽しむことができた。その後の民放での再放送などでは、30分フォーマットで1話を前編と後編の2話に分ける形で放送されることになるが、初放送時にオリジナル版と同じ形で観ることができたことによって、初期のファンは「これが本来の「サンダーバード」の姿である」と記憶に留めることができたのだ。
日本放送版でのもうひとつの画期的な要素は、「吹替」の存在だ。「サンダーバード」は演技を役者ではなく人形が行っていることから、キャラクターが喋るセリフは当然別録りがされている。イギリスでの撮影時は、先に役者が声を録音し、声に合わせた演技をさせる「プレスコ」方式が用いられていた。オリジナル版においても、声を演じる役者の数を増やすのは大変で、プレスコを担当した役者はひとりで複数の役を演じる「兼ね役」が振り当てられていた。しかし、日本語吹替版では、主要キャラクターの吹替は、「兼ね役」が存在しないように配役されるという丁寧さで制作されている。また、絶妙な翻訳がなされた吹替台本の効果もあり、日本の「サンダーバード」ファンは、オリジナルの英国版音声よりも日本語吹替版の方に原点的なものを感じるほど。それくらい、「サンダーバード」は日本語吹替版が馴染んでいる作品でもあるのだ。
日本では、1966年のNHKでの放送後も、翌1967年には民放のTBSでやはり1時間枠で再放送されたことを皮切りに、1970年、1974年、1980年、1987年、1992年、2003年と7度にわたって再放送されている。特に66年、67年、70年、74年という短期間のうちに何度も再放送されたことが、日本において多くの「サンダーバード」ファンが生まれるきっかけになったことは間違いない。
さらに、日本では最初のテレビ放送に合わせて「サンダーバード」のプラモデルが発売され、大ヒットを記録した。当時、テレビアニメなどのキャラクタープラモデルを多く発売していたメーカー、今井科学が「サンダーバード」の放送開始直後に版権を取得し、1966年12月には日本初の「サンダーバード」のプラモデルとなる、ゼンマイ走行ギミックを持つサンダーバード2号が発売した。この国産のサンダーバード2号のプラモデルは、折り畳み式の支柱を立てると劇中の着陸シーンを再現でき、さらに着脱式コンテナには高速エレベーターカーが3台収納できるというギミックと低価格から大ヒット商品となる。これをきっかけに、今井科学は「サンダーバード」のプラモデルのシリーズ化を決定。他のサンダーバードメカに加え、救助メカやペネロープ号(FAB1)はもちろん、トレーシー島をキット化したものや、さらにはトレーシー兄弟のフィギュアとそれぞれが乗るミニサンダーバードメカがセットになった「マスコット隊員」シリーズや、小さい子供でも気軽に手を出せる低価格のアイテムなども展開。このプラモデルのブームをきっかけに、今井科学とバンダイが提供となって、1967年のTBSでの再放送が実現。豪華版から手軽なものまで、2年間で42点もの「サンダーバード」のプラモデルが発売されたことからも、当時のプラモデルを通じた「サンダーバード」の盛り上がりがわかるだろう。また、プラモデルのパッケージイラストをイラストレーターの小松崎茂氏が担当。活躍シーンを再現したイラストの完成度もプラモデルの人気を後押ししていった。
テレビで観るリアルなメカを、そのままプラモデルとして気軽に手にする状況が相乗効果となり、自分で「サンダーバード」の劇中シーンをプラモデル再現して楽しむ「ごっこ遊び」を楽しんだと語る、作品に影響を受けた著名人も多い。こうして、映像とプラモデルという立体物を一緒に楽しむことによって、日本独自の「サンダーバード文化」が盛り上がっていったのだ。
国際救助隊
南太平洋のトレーシー・アイランドに本拠地を置く。
大富豪のジェフ・トレーシーが所有し、2階建ての屋敷の地下に隠されているのは、秘密の格納庫と保管施設で、
緊急事態に応じて作業できる飛行機、車両などが収容されている。
サンダーバード1号
全長35m、全開時翼長約24m。最高時速24,135km(マッハ約20)。地球上のどこにでも1時間以内に急行することができる、可変翼を備えた超音速有人ロケット。操縦席は機体がいかなる姿勢であっても常に水平に保たれるジャイロ機構を持ち、垂直離着陸機能によりどんな荒地でも着陸が可能。カモフラージュされたプールの下から飛び立ち、事故災害現場にいち早く駆けつけ状況を調査、分析し、救助プランを立てる役割を担う。救助活動中は周囲を警戒し、俯瞰した状況から的確な行動指示を行う。遠隔操作可能な空中カメラ、水中の状況を確認するソナー、障害物の破壊や外部から自機を守るための機銃を装備している。
専任パイロットは冷静沈着な長男、スコット・トレーシー。
サンダーバード2号
全長約76m、全幅約55m、全高約18m。国際救助隊の全ての救急メカを事故災害現場へ運ぶ超大型輸送機。主力エンジン2基の他計20基の推進機を持ちあわせる。トレーシー島の地下格納庫に用意された6つの用途別コンテナを状況に応じて積み込むことができる。圧倒的な輸送力と頑強な機体構造を持ち、国際救助隊では最も出動回数が多いとされる。輸送機能以外に、サンダーバード2号機本体にも救助作業用の機能が充実しており、磁力クレーン、シャベル・クレーン、電磁石クレーンなどの吊り下げ機構、監視カメラや被害者を収納する救助ボックスを搭載。機体上部には障害物の破壊や防衛用に使用する多目的ミサイルも装備している。
専任パイロットは三男、バージル・トレーシー。
サンダーバード3号
全長約60mの巨大宇宙ロケット。マッハ30まで加速可能。人類の活動範囲が宇宙まで及んだために発生する、宇宙空間での災害時の救助作業全般とサンダーバード5号の補給等の連絡機として活躍する単層式ロケットである。真っ赤な機体には3基の推進用の大型エンジンを搭載。原子炉を内蔵しているが、推力には化学燃料ロケットを使用。宇宙空間での姿勢制御用のスラスターが機種や機体中央部に配置されている。また、船外活動用のエアロックも搭載。トレーシー島に建つドーナツ状のラウンドハウスの中心部を抜けて発進する。宇宙空間で発生した大型ロケットや宇宙ステーション、テレビ衛星などの事故が発生した際に駆けつける。
主任パイロットは末っ子、アラン・トレーシー。
サンダーバード4号
全長約9mの水陸両用機。サンダーバード4号は水上・水中での救助活動でその威力を発揮する。通常、サンダーバード2号の4番コンテナに収納され運搬される。発進時は2号機本体からコンテ内を海面に落下させ、シャッターが開いて海底へ突入してゆく。小型のボディは、障害物の多い海中での自在な行動と有視界による繊細な作業を両立させるべく設計がなされている。船体には救助作業や障害物を除去するためのマジック・ハンド、小型魚雷、ドリル・チューブ、深海を照らすレーザー・トーチなどさまざまな救助装置を備えている。各部には方向転換や姿勢保持用のタービンが配置され、船体下部にはホバークラフト機能もあり、地上の移動も可能となっている。
パイロットは四男、ゴードン・トレーシー。
サンダーバード5号
国際救助隊の通信の要となる宇宙ステーション。全長95mの情報収集用の人工衛星。極秘に地球の軌道をまわり、地上のあらゆる言語の救難信号をキャッチすると救助要請を本部に急報する。さらに、救助作業をサポートする情報収集なども行う。動力は太陽電池と小型原子炉を使用。長期滞在に備える住居機能、宇宙ロケットや人工衛星、隕石などとの衝突を避けるための軌道変更機能を持ち、ブレインズが開発した人工重力発生装置によって、内部は地上と同程度の重力を感じるようになっている。次男のジョン・トレーシーが常駐しているが、3ヶ月に1度、五男のアラン・トレーシーと交替する形で、地上での救難情報の収集にあたっている。
ペネロープ号(FAB1)
レディ・ペネロープが乗るピンクのロールスロイス。長さ6m40cm、時速320km超え。パワフルで洗練された6輪の車体は、高級車らしい豪華な内装に加え、特殊通信機能や防弾機能と防放射線機能を持つ。タイヤは金属性のため、銃弾などによってパンクするようなことはない。また、車体前部には、煙爆弾、機関銃、高速走行用のブースタージェット、雪面走行用のスキーなどが装備されており、特殊装備と場所を選ばない移動能力によって緊急の事態に備えている。また、水陸両用の機能を持ち、水上をボートのように走るだけでなく、車体の下から水中翼を展開し、水の中に潜っての水中翼船となる機能を持っている。ドライバーはペネロープの執事のパーカーが務めるが、ペネロープ自身が運転したこともある。
サンダーバード トリビア
TRIVIA
制作費は1話あたり2000万円
「サンダーバード」は最初はCM込みの30分1話(25分尺)の作品を想定して制作が進められていた。放送局であるATVのプロデューサーであるルー・グレイドに完成した第1話を見せたところ、その完成度の高さに驚き、「これはテレビ番組じゃない、映画だ! 映画なら1時間の尺にしないと」と判断。25分尺ですでに9話分の撮影が終わっていたが、これに追加撮影を加えて50分尺のものに変更し、以降のエピソードも50分尺を想定したシナリオが作成される。そのため、前半のエピソードはやや冗長な印象に仕上がってしまっている。50分尺になったことで制作費も増額され、1話あたり当時の価格で4万ポンド(約2000万円)となり、世界的に見ても最も高額な制作費を投じた番組となった。
こだわりのマリオネット造形
マリオネットの頭部は、アイデアスケッチをもとに油粘土で造形し、ジェリー・アンダーソンの妻で共同プロデューサーを務めたシルヴィア・アンダーソンがデザインのチェックやカメラテストなどを行って確認。OKが出たものを型取りし、グラスファイバーに置き換えたものが撮影に使用された。目は操演師がワイヤーで左右に動かしていたが、唇は役者が吹き込んだ台詞に合わせて電磁石をつかって開閉する「リップシンクロシステム」を採用している。また、メインキャラクターはノーマルフェイスに加え、「笑顔」、「考え込む顔」そして目の瞬きが可能な4つの表情が用意され、状況に応じて眉の角度を変えるというような使い分けることでさまざまなシーンに対応していった。
絶妙な操演によって生まれる
マリオネットの演技
マリオネットを操作するために、スタジオには舞台セットの上の高さ2.5mの位置にブリッジと呼ばれる足場が作られ、操演士たちが動かした。マリオネットは頭部には、目を動かすものと頭の向きを動かすもの、人形自体を支えるものなど5本の操り糸を配置、さらに両手の上下を行う2本の糸があり、ひとりで7本の糸を操ることで人形に演技をさせていた。ちなみに、操演士はマリオネットを操るだけでなく、マリオネット自体の造形も担当。マリオネットの演技をさせながら、破損した場合などはその場でメンテナンスも行っていた。現場では、5人の操演士がマリオネットを操り、映像に命を吹き込んでいた。
謎の多い救助メカのミニチュア
劇中で印象的な活躍をしていた救助メカだが、撮影に使用されたサンダーバード1号〜5号まで、当時の撮影に使用された全てのモデルは破損や盗難、紛失などによって失われてしまっている。そのため、各ミニチュアがどのように制作されたのかは、関係者の証言に頼ることしかできない。サンダーバード1号〜4号に関しては、シチュエーションに合わせてスケールの異なるものが複数用意されていたが、5号のみ1体だけの制作だった。ゲストメカや破壊されるミニチュアには、ディテール用にプラモデルの部品などを貼り付ける「キットバッシング」と呼ばれる手法が取り入れられている。
メカに迫力を与える特殊撮影
「サンダーバード」における迫力のメカ撮影シーンのタイミングは、すべて人力によって行われている。この操演を担当したのは、若き日のブライアン・ジョンソン。後に、『エイリアン』や『スター・ウォーズ エピソード5:帝国の逆襲』などで特殊効果を担当し、アカデミー賞を受賞した人物。巨大なミニチュアの発射シーンや着陸シーンでは、大量の火薬が使用され、推進ノズルから噴射の際には、煙や飛び散る破片などに耐えながら、大きく重量があるサンダーバードのメカたちを腕力で支えた。ちなみに、撮影当時に使用されていた火薬類は、現在の安全基準には合わないため使用できず、現在の技術で完全再現するのは難しい。
新たに取り入れられた撮影技術
「サンダーバード」の迫力ある映像を支えたのは、ハイスピード撮影。通常のカメラでは1秒間に24コマしか撮影することができないが、ハイスピード撮影は1秒間を24コマ以上で撮影することができる。1秒間のコマ数を多く撮影し、それを通常のスピードで見ると素早く動いているように見える。これを駆使することで、ミニチュアの飛行や走行シーン、さらにはセット波までもリアルに見せることができた。また、長距離を移動しているように見せる飛行シーンや走行シーンでは、ミニチュアを動かすのではなく、背景の空や道路自体をベルト状に繋げて背景を動かす「背景ロール」を取り入れている。水中シーンでは薄型に作られた大型の水槽を配置し、水槽を挟んで撮影。浮力のあるミニチュアを水中に沈めることなく、水中をサンダーバード4号が自在に動き回り、救助するシーンを撮影することができた。
映画撮影の常識となる技術を
先駆けて導入
「サンダーバード」では、当時導入されたばかりのビデオカメラを使用し、カメラマン以外もファインダーで撮影している映像をモニターで見ることができる、現在の撮影現場では常識となっている「ビデオ・アシスト」という方式を導入。当時はまだモニターの性能などが低く、問題点もあったものの、2メートル以上も離れた足場の上からマリオネットを操る操演士もこのビデオ・アシストによって、ファインダーではマリオネットがどのように動くのかを確認することができ、より自然な演技をさせることができたのだ。
※一部事実が確認できない内容が含まれていたため、修正いたしました